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神の領域〜アルヴォ・ペルトの世界〜 [素人の扉〜Jazz&Classic〜]

先日鑑賞した絶品映画『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』の中で度々流れた旋律。遥か昔を思い出しながら、彼の造り出す深き弦の調べに身を投じた[ぴかぴか(新しい)] 
 
クラシック素人につき、現代音楽となると更に、まるっきり???の小生なのである。 
 
しかし、新婚間もない25年前の札幌で、FMラジオから偶然流れていた旋律に、まさに戦慄が走った[exclamation&question] 
 
 
 
ほぼ変わらぬテンポで、単純なテーマが延々と繰り返されるが、徐々に弦の響きが幾層にも重なり合い、いつしか溢れんばかりの光の束となって部屋中を照らし、一面、純白の王国を作り上げる。どこまでも澄んだ鐘の音は、天空からの神の声か?
 
素人の私でも一聴しただけで葬送曲だと解る。
「天にも昇る気分」とは良く使われる表現だが、これは今まさに昇天した魂が、天国に導かれる様を描いた中世の宗教画を見ている心持ちになる。 決して悲しみにくれるだけではない。ひとつの完結した命が無上の歓びを持って天国に迎えられる姿を、崇め、尊んでいるのだ。
 
こんなに透明度の高く、精神性を感じる音楽に、当時の私はとてつもない衝撃を受けた。
翌日、書店に走り、ラジオで聞き漏らした曲名を、FM雑誌(当時の『FMレコパル』だったような)の番組表から探し当てた。
アルヴォ・ペルトベンジャミン・ブリテンへの追悼曲』 
 
そして、すぐさまその足でCDショップに向かう...
 
Tabula Rasa

Tabula Rasa

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ecm Records
  • 発売日: 2011/09/02
  • メディア: CD
 
中世もしくは近代の作品かと思っていたが、20世紀の現代作曲家の手によるものであった...[がく~(落胆した顔)] 
そして「ベンジャミン・ブリテン」とは、イギリスの作曲家。1976年没。 
 
arvo-part2.jpg
アルヴォ・ペルトArvo Pärt)・・・現在77歳。エストニアで生まれオーストリアに亡命、その後ドイツ・ベルリンに移住した現代作曲家である。
当初は厳格な古典主義派だったが、70年代からミニマリスム楽派として宗教的なアプローチが主となっていく。
音楽理論には全く以てチンプンカンプンな小生であるが、「ミニマル・ミュージック」とは、最低限の音数とパターン化された音型を反復させる音楽で、ドラマチックな展開は皆無、単純な曲調の中での微細な変化が特徴なのだそうだ。ゆえに、クラシックに留まらず、プログレッシブ・ロック、テクノ・ポップにもミニマル派は存在する。ブライアン・イーノ坂本龍一も、ミニマル・ミュージックを多用した音楽家なのである。

所謂、癒し系ミュージックと呼ばれる環境音楽等に使われる手法なのだが、アルヴォ・ペルトの音楽は、癒されるどころか、胸が締め付けられ、己の魂が磨き込まれていくような感覚に陥るのである。信仰心の薄い仏教徒の私が「キリストに跪く」と云っても何の説得力も無いのだが、まさにその感覚なのだ。 
 
アルヴォが若い頃、ある高僧に訊ねた。
「作曲家としてどうすれば自分をもっと磨く事ができるでしょうか? 私は今、祈りの言葉とか賛美歌のテキストに曲をつけているが、そのことは作曲家として自分に役立っていると思うのですが・・・」
僧は答える。 
『祈りの言葉はすでにすべて書かれてしまっています。あなたはそれ以上増えす必要なないのです。お祈りするための言葉や準備は全部整っているのです。ですからあとは、ひとえにあなたがそうする気があるかどうかにかかっているのです。』
 
彼の音楽を物語る『真理』である。
禁欲的な生活を全うし、純粋に神への祈りのみに自己の全身全霊をかけて取り組む彼の姿が目に浮かぶ。
 
後年の彼の言葉。
「私が見出したのは、たったひとつの響きが美しく奏でられるだけで十分だという事だ。静けさと沈黙ともいえる。私は、わずかな音素材、ひとつの声部、またはふたつの声部で作曲する。わたしはもっとも単純な手段で、3和音で、ある特定の調で曲を構成する。3和音の3つの音の響きは、鈴の音に近い。だから私はそれを「ティンティナブリ(鈴音)」と名付けたのだ。
 
自己満足・独りよがりの現代音楽とは一線を画すアルヴォの作品群。
伝統的な要素と前衛的な身振りが奇妙に結合した「祈り」の音楽。時代を超越した普遍性
彼を初めて聴いた当時は、アルヴォ・ペルトは日本では全くの無名であった。CDショップには冒頭のECMから発売された1枚しか在庫は無かった。昨今、「癒しブーム」に乗って漸く国内でも彼の作品が多く発表され始めたのは、きっかけは別にしても嬉しい処である。そして更にできるなら、彼の正当な評価も願いたいものだ。アルヴォの音楽は、単なる「癒し」では決して無い、崇高なる「祈り」なのである。
 
前述の映画に挿入された『Fratres』を(前半部分のみ)
 
 
Very Best of Arvo Part

Very Best of Arvo Part

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI Classics
  • 発売日: 2010/08/09
  • メディア: CD
 
入門用としてベストな2枚組。 
彼の後期の代表作は、ほぼ網羅されている。
 
 
Passio

Passio

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ecm Records
  • 発売日: 1994/02/15
  • メディア: CD
 
ヨハネ受難曲〜深淵なる世界です。
 
 
 
ペルト:タブラ・ラサ/交響曲第3番

ペルト:タブラ・ラサ/交響曲第3番

  • アーティスト: 湯浅卓雄,ペルト,アルスター管弦楽団,レズリー・ハットフィールド,レベッカ・ヒルシュ
  • 出版社/メーカー: Naxos
  • 発売日: 2001/01/01
  • メディア: CD
 
初期の交響曲やバッハのコラージュが収められている貴重盤。
声楽曲が含まれていないのも珍しい。
 
 
 

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コメント 2

Labyrinth

いやー つむじかぜ さんの感性は凄いと常々思っておりますが、
“音” に対する探求心も並々ならぬものがございますね~(^_-)-☆
またひとつ知識が増えました。 映画が楽しみです♪
by Labyrinth (2013-06-12 17:01) 

つむじかぜ

> Labyrinth 様
お褒めに預かり光栄で〜す^^
残念ながら“女性”への探究心は、徐々に衰えてつつありますが...(・・;)
by つむじかぜ (2013-06-13 02:13) 

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