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「ハドソン川の奇跡」 [上映中飲食禁止じゃ!]

 
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御年86歳のダーティーハリーは、今もバリバリ健在なのである[パンチ]
 
2009年1月。マンハッタン上空で突如、飛行機が制御不能となる。サレンバーガー機長は飛行機をハドソン川へ不時着させ、乗員乗客155名全員生存という奇跡を成し遂げた。しかしその裏側では、機長の判断をめぐり国家運輸安全委員会の追及が行われ……(ぴあ映画生活より) 
 
実話である。
2009年当時、日本のNewsでも流されており、当然記憶には残っている。
だが、日本のマスコミが「事故」なのか「美談」 として報道したかは、うる覚えで、「川に強制着陸した」衝撃的な映像のみがクローズアップされていたイメージなのだ。勿論、その後の機長を取り巻く状況変化を詳しく報道する国内メディアは残念ながら無かったようだ。海外ニュース報道の限界を感じつつ、すでに記憶から消えかけている事件にスポットライトを当てたクリント・イーストウッド監督の眼力に拍手を送る[ぴかぴか(新しい)]
 
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トム・ハンクスが素晴らしい。
乗客の安全を守る為、永年のキャリアから得た最善の判断と正確な操縦をしただけで、一夜にして「英雄」に祭り上げられたベテラン機長の戸惑い。だが、判断を謝れば大惨事となった現実に目覚め、時間の経過と共に、恐怖心が増大していく。そして、自分の下した揺るぎない決断にも僅かな猜疑心も芽生え始める。彼の憶測を見透かしたように、安全委員会は、「空港に戻れるにもかかわらず、機長の判断ミスにより、最も危険な水上着陸を断行した」事件として調査を開始していく。
 
オープニングが、事故後の冷静さを取り戻した機長の悪夢から描かれ、彼の複雑な心境とこれから巻き起きる状況を示唆する見事な演出となっている。プライドと自信を漲らせながらも、自分の行動への疑問が、ミクロンのガン細胞が繁殖するように、徐々に大きくなっていく様を、トム・ハンクスが抑えた演技で見事に表現した。
 
中盤からは、事故当時の再現である。
本物のエアバスを購入して、撮影に使用するなんて・・・ハリーの本気、面目躍如だ[どんっ(衝撃)] 
作品を通して貫かれるリアリズムの源泉は、製作者達の妥協なきプロ魂と、やっぱりお金持ちは凄いよね〜なのだが、この重厚な迫力は一線級のアクション映画さえも凌駕する。鳥の大群が両エンジンに飛び込む想定外の事故から不時着までのわずか208秒間を、機長の決断と共に操縦室・客室及び管制塔でのそれぞれの人々の行動が濃密に描かれている。
 
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更に、後半の公聴会のシーンはサスペンス映画さながらである。
小生なら「全員助かったんだから、いいじゃない」なのだが、それでは済まさない正義の国アメリカ[exclamation&question] 英雄から一転して容疑者の立場となった機長が、徐々に追い詰められていく。理論上のフライトシュミレーションが、何度も無事に空港に帰還する場面がPCゲームのように再現されていく。万事窮した副操縦士の傍で、最後にサリー機長が示した提案とは...そしてその結果は...
 
単なる美談の再現ではなく、一人のプロフェッショナルが揺るぎない自信に忍び寄る影に怯える葛藤まで掘り下げて表現した人間ドラマである。同時に真実の実証の困難さ・・・ 反証の材料を提出できなければ、「英雄」は「犯罪者」として簡単に裁かれる「恐ろしさ」をも同時に描いている。そして人々の運命が、一瞬の偶然に左右されてしまう儚いものである事まで静かに訴えている。
 
夫との電話でしか登場しない妻役のローラ・リニー、憎らしいほど体制側を演じた安全委員会の紅一点アンナ・ガン、毅然とした客室乗務員役アン・キューザック(ジョン・キューザックの実姉らしい)など、渋い小生好みの脇役女優も充実しているが、何と言っても副操縦士ジェフ・スカイルズ役のアーロン・エッカートが秀逸だ。
 
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操縦室という密室で機長の唯一のパートナーとして、「サリーの判断」を一片の曇りもなく支持する実直な男を好演した。サリーの孤独な戦いの中、自己を貫き通せたのは、家族の支えとこの親友かつ信頼すべき相棒ジェフの存在があってこそなのである。公聴会での最後の彼の言葉〜張り詰めた雰囲気でのナイスなジョーク〜アメリカという国の深さが味わえる場面だった。 
 
老境の域に達した映画監督が、常人では考えつかない演出や奇抜な映像で世間を驚かせる事が多いが、イーストウッドほど一貫した正攻法で「人間」を描き続ける人も珍しい。奇を衒わず、緻密な構成・演出を自然に魅せる力は、現代の映画界にあって特筆される。圧巻の作品であった[ぴかぴか(新しい)]
 
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コメント 4

Labyrinth

(^_^)ノ 流石 つむじかぜ さん!
いつもながらの冷静沈着な筆使い♪ 素晴らしいです♪ (^_-)-☆
思い出すと、今でもどこかが熱くなりそうです ^^;
大人の鑑賞に堪える佳品だと思いました。
by Labyrinth (2016-10-17 22:47) 

つむじかぜ

> Labyrinth 様
Labyさんの仰る通り、こういう作品に巡り会うと、なんだか心が洗われてホッとしますね^^
by つむじかぜ (2016-10-17 23:53) 

末尾ルコ(アルベール)

90分台の上映時間でこの凝縮した内容・・・イーストウッド芸術留まるところを知らずですね。  RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2016-10-18 00:43) 

つむじかぜ

> 末尾ルコ(アルベール)様
まさしくプロフェッショナルの極み!!!
by つむじかぜ (2016-10-19 01:15) 

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