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『ヒミズ』 [上映中飲食禁止じゃ!]

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監督・脚本:園子温
原作:古谷実
音楽:原田智英 
撮影:谷川創平
アクション監督:坂口拓
美術:松塚隆史
 
キャスト:染谷将大 二階堂ふみ
渡辺哲 吹越満 神楽坂恵 光石研 渡辺真紀子
黒沢あすか でんでん 村上淳 窪塚洋介 吉高由里子西島隆弘 鈴木杏 モト冬樹 堀部圭亮 諏訪太朗
 
15歳の住田祐一の願いは“普通“の大人になること。同じく15歳の茶沢景子の夢は、愛する人を守り、そして守られて生きることだった。そんなふたりの日常が、ある事件をきっかけに180度変わってしまう。罪を犯し、破滅へと向かう住田を茶沢は救おうとするが……。(ぴあ映画生活より)

 
「ヒミズ」・・・日不見〜モグラの意味である。
 
 園監督作は昨年の「冷たい熱帯魚」の衝撃かつ痛快さを超越した猛毒さにたじろぎ、新春からは刺激が強いモノは避けようと思っていたのだが、新聞批評の「過去作とは一線を画す...」に惹かれ、錦糸町楽天地でのロードショー鑑賞を決め込んだ。(この手の作品としては珍しい大スクリーン上映!さすが錦糸町、封切り初日からガラガラです[ふらふら]
 
2001〜2003年にヤングマガジンに連載された漫画「ヒミズ」の実写化ではあるが、近年の世情を大きく取り込んだ園監督の想いが脚本として新たな命を吹き込んだ「胸張り裂けんばかり」の感動作となっている[どんっ(衝撃)]
 
昨年、実際に自分の目で見た『南三陸町』の光景が蘇る。http://tsumujikaze2.blog.so-net.ne.jp/2011-07-24
悲しみや怒りを通り越して、私が一番に感じたのは「途方も無い虚無感」
・・・だってあまりにもすべてが失くなっているので、何も考える事が出来なかった・・・
 
あの震災により、直接被災しなかった多くの国民までもが、己の人生観・価値観を大きく揺さぶられたはずである。
原作での住田少年は、ある事件を契機に将来への希望を失い、「悪い奴」を殺す事を自分の使命とした。
新たに園監督は、震災によってすべてを失った非難生活者達を少年と絡めると共に、街のダークサイドで生きる所謂「悪い奴ら」と対比させる。
そして絶望の狭間で咲く一輪の可憐な花として、少年に一途な愛を貫く茶沢景子を置いた。
 
二人の若き俳優の熱演なくしてこの傑作は語れない。
 
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中学3年の同級生の設定としては、住田・染谷将大(19歳)は男臭いし、茶沢・二階堂ふみ(17歳)は肉感的過ぎるのはこの際、気にしないでよろしい[パンチ]
 
染谷将大。自分の将来に大きな目標も野望も持たないが、家業のボート屋を継ぐ「平凡な生活」を確固たる意志を持って夢見る住田少年役を、等身大で見事に演じた。今時の草食系男子が、決して熱いハートを持ち合わせていない訳ではなく、むしろ内面に潜む心の強さを表現していた。社会一般で云う「人間のクズ」の両親を持ちながらも、彼の正義感は優しい心根と共にギリギリのバランスで育まれていた。そんな純粋な少年の心も、実父との或る事件を境に脆くも砕け散る。なにせ中学3年生なのだ。壊れてからの彼の演技はまさに「壮絶」の一語に尽きる。
 
その住田少年に一方的に恋い焦がれる同級生・茶沢景子役に二階堂ふみ。一見裕福に見える茶沢家だが、実は環境は少年と同じく、魂の抜け殻となった母を持つ崩壊家庭なのである。当初は景子のストーカーまがいの求愛に辟易した住田であったが、親に棄てられた境遇の二人は徐々に心を通い合わせていく。この過程の描写が憎らしいほど美しい。同じ境遇ながら、住田は深く内面に閉じこもるが、景子は影ひとつ見せずに明朗闊達に振る舞う。甲斐甲斐しい程、明るく住田少年に尽くす二階堂のけれん味の無い演技は、驚嘆に値する。そして、壊れてしまった少年を、まるで聖母のような「愛」で包み込む迫真の芝居に及んでは、名女優誕生と云わざるを得ない[パンチ]
デビュー当時の「宮崎あおい」の天才肌を彷彿させるが、仄かな色気を持ち合わせている面で、二階堂は更に上をいく。今後の活躍が楽しみな女優の登場である。
 
若き二人を捉える手持ちカメラが、彼らの感情の起伏を澱みなく描き、鄙びたボート屋から臨む河川を優しく時に寂しく魅せる。挿入される管弦楽の調べも、目立たぬが心に響く。
 
この二人を取り囲む大人の脇役陣も個性派ぞろい。園監督作常連の俳優が目白押し。名言の数々[exclamation×2]
特に震災避難民の元社長役の渡辺哲が鬼気迫る演技。津波ですべてを失った彼が叫ぶ。
「俺は津波で一度死んじまった、いつくたばってもいいニッポンの過去だ。でも、あの子は違う。この金であの子に未来を託したいんだ!」
 
震災などお構い無し、飄々とヤクザな人生を歩むサラ金屋の社長・でんでん
「ボランティアとか政府の補助とかをあてにしてるお前らとは違うんだよ。俺は自分の力で稼いでるだよ!」
「お前には、腐るほど道があるんだ。それなのに勝手に自分を追い込んでる...」 
 
「冷たい〜」のような血しぶき舞い上がるグロな場面は皆無だが、暴力シーンでの園演出は更に凄みを増す。この辺りで観客の「好き嫌い」が別れてしまうのは少々残念であるが... 
「殴る、蹴る」の連続〜痛い、心が痛い。実の親に殴られる痛み。他人にナイフで切られるより痛い。 
 
「クズ」の父親(光石研)が実の息子に向かって云う。
お前なんかいらねぇんだよ。死んでくれれば良かったのによぉ」 
 
作中には、他にも多くの人々の隠れた生活を曝け出す。
被災地から車のホイールやATMの現金を盗み、「震災特需」と喜ぶ青年達。心を蝕まわれ、通り魔殺傷を起こす男達。情欲にすがるのみの女。スリで優雅に暮らす男。
 
震災により、生きる希望を失った人々。
絶望の中で、生きる力を見失わない若者達。
他人の痛みを糧に生き永らえる「奴ら」
何も変わらず、考えず、ただ生きてる人達。 
 
様々な人間の想いが蠢く地獄の淵を彷徨いながら、少年は景子のひたむきな愛の力を借りて遂に「光る未来」の入口に辿り着く。 
 
3.11の悲劇以降、もてはやされる人類の絆などという甘い感傷など一切排除し、真正面から現実に立ち向かった製作者の心の叫びの作品だ。 若者たちの心の闇を描いた異色漫画のエッセンスに、園監督は、震災以降の大人達の崩れた価値観と、全く変わらない現実をも取り込んでいく。そして、若い男女が未来に向かってもがきながら紡いでいく「」の形を通して、人間の「生きる意味」を問いた大恋愛劇に昇華させた。
 
震災以後の平成ニッポンの文芸界も大きく価値観を変わらざる得ないとするならば、この作品はその記念碑的傑作になるかもしれない。 2週続けて鑑賞した久しぶりの映画となった。ラストシーンに今でも胸が熱くなる[ぴかぴか(新しい)]
 
少年よ、しぶとく生きろ[exclamation]立派な大人になれ[exclamation×2] 
 
 
 
二階堂ふみ〜実力の片鱗 

 
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末尾ルコ(アルベール)

冒頭からラストまで、「これが一本の映画か?」と言いたくなるほどあらゆる要素が詰まっていました。

この作品を「多くの人と普通に語り合える」社会でない現状は、絶対に変えねばなりませんね!

                                RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2012-01-19 01:44) 

non_0101

こんばんは。
ストーリーも演技も凄すぎて、本当に圧倒されました。
ラストは“頑張れ!”と応援したくなりますよね☆
by non_0101 (2012-01-19 20:31) 

haku

これは観ないといけませんね!
RUKOさんもおっしゃっているので...^ー^
by haku (2012-01-20 07:42) 

ぷーちゃん

これは、おいらもメモメモっと。
by ぷーちゃん (2012-01-20 22:51) 

つむじかぜ

>末尾ルコ(アルベール)様 non_0101様 haku様 ぷーちゃん様

ほとんどのお客さんは、「ALWAYS3丁目〜」に流れるんでしょうね。
(決してこの作品をこきおろす訳ではありません。私も観に行くつもりです)
邦画の奥深さを、もっと多くの方に知っていただくには最適の作品です。
痛み・苦しみを知らずして幸せは味わえませんから...


by つむじかぜ (2012-01-21 02:31) 

Labyrinth

(^_^)ノ こんばんは。
久々に泣かされましたっ ポリポリ (・・*)ゞ
心が震えるって感じも久々・・・。
やはり園監督はハズレがないですね。なんちて えらそーに。 (^_^ゞ
TBも宜しくお願い申し上げます。
by Labyrinth (2012-02-14 19:15) 

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